大林組土木建築工事談合株主代表訴訟について
1 事案
大林組が平成11年から平成19年にかけて関与した、
- 新潟市発注の下水道推進工事及び建築工事談合事件
- 和歌山県発注のトンネル工事談合事件
- 旧防衛施設庁発注の特定土木建築工事談合事件
- 枚方市発注の第2清掃工場の建築工事談合事件
- 名古屋市営地下鉄6号線延伸工事談合事件
の談合事件につき、平成20年6月に大阪地方裁判所に株主代表訴訟を提訴しました。
訴状では談合に関与、あるいは談合防止についての注意義務を怠ったと考えられる取締役15名を被告としています。
平成19年6月の株主総会で、定款に談合訣別条文を新設するとの議決がなされたのちにおいても、談合罪で起訴された元顧問らに刑事事件に関し会社が便宜を図っていたことが発覚したことを受けての提訴でした。
2 訴訟の経緯
訴訟において原告弁護団は、大林組の談合訣別の定款変更に沿って、会社自らが訴訟に参加し、過去の談合を検証し、再度談合から訣別するに足りる実効あるコンプライアンスシステムを構築するための委員会設置を求めました。
大林組もこれに積極的に応じ、平成21年6月1日、原告の推薦する弁護士1名を加えた3名の外部委員で構成する「談合防止コンプライアンス検証・提言委員会」を設置し、再発防止策を提言し公表するとの内容を含む和解が裁判所で成立しました。
3 和解の内容
和解の内容は、「談合防止コンプライアンス検証・提言委員会」の設置と、被告らが会社に対し前記委員会や内部通報制度の外部受付窓口、談合防止マニュアルの整備等のための費用として2億円を支払うとすることを骨子としたものです。
株主代表訴訟の目的は、談合・カルテル・違法な企業献金等の違法行為に対し、その事実を明らかにし、同様の違法行為が再発することのないようにするとともに、違法行為に関与、あるいは監視・監督責任を怠った経営陣に、その会社に対する責任をとらせることです。
この訴訟の和解内容は、この株主代表訴訟の目的に沿ったものです。
4 この裁判の意義
この裁判を通じて大林組は、従前に生じた談合の事実を真摯に受け止め、真に訣別することを社会的に明らかにするとともに、そのための法令遵守体制を全社をあげて取り組む姿勢を明らかにしたことです。
この和解を契機にして、橋梁談合についての株主代表訴訟事件についても、「検証・提言委員会」を含め、大林組の代表訴訟の和解内容に沿った和解が順次成立しています。
5 主任弁護士
阪口徳雄・辻 公雄・松丸 正