株主の権利弁護団

株主代表訴訟について

1 株主代表訴訟とは

株主代表訴訟とは、株主が会社のために役員等に対して提起する訴えのことです。会社法847条から853条に規定があります。
ここでいう役員等には、発起人・設立時取締役・設立時監査役・取締役・会計参与・監査役・執行役・会計監査人・清算人が該当します。

2 制度趣旨

役員等の行為により、会社に損害が発生しても、責任を追及すべき監査役や取締役も会社の経営陣の一員ですから、馴れ合いで会社が取締役に対して責任追及をしないことがあります。会社に損害が発生すると、企業価値の低下により、最終的には株主が損害を被ります。そこで、会社が取締役に対し責任追及をしない場合に、株主が会社のために取締役に対し訴えを提起することを認めたのです。

3 手続

  1. 訴えを提起できる株主は、株式の全部に譲渡制限がついていない会社(公開会社)では、6か月前から引き続き株式をもっている株主に限られます。ただし、定款でこの期間を短縮できます(会社法847条1項)。公開会社でない場合は、6か月前から株式を有していることは必要ありません(会社法847条2項)。
  2. いきなり代表訴訟を提起することはできません。まず、会社自身が提訴するかどうかを検討できるように、会社に対し、取締役の責任を追及する訴えの提起を請求しないといけません(会社法847条1項)。
    請求の具体的なあて先は、監査役を置いている会社(監査役設置会社)では監査役、監査役設置会社以外の会社では代表取締役又は取締役と会社との間の訴訟について会社を代表する権限を持っている者です。
    会社がこの請求の日から60日以内に提訴しないとき、はじめて株主は代表訴訟を提起できます。なお、会社が提訴しない場合、提訴しない理由を通知するよう会社に対して請求できます(会社法847条4項)。
    なお、時効が完成してしまうなど、60日間の経過により会社に回復できない損害が生じる恐れがある場合には、株主は、直ちに責任追及の訴えを提起できます(会社法847条5項)。
  3. 裁判を起こす裁判所は、会社の本店所在地を管轄する地方裁判所です(会社法848条)。会社の本店所在地は、会社の登記事項証明書に載っています。
  4. 裁判を起こす場合、裁判所に手数料を収める必要がありますが、請求額がいくらであっても、一律1万3000円で済みます(会社法847条の4第1項、民事訴訟費用等に関する法律4条2項、別表第一)。
  5. 代表訴訟で判決が出ると、会社に判決の効果が及びます(民事訴訟法115条1項2号)。被告となった取締役が賠償を命じられた場合、会社に対して賠償することになり、原告の株主に賠償されるわけではありません。株主が自身の被った損害の賠償を直接自分自身に行なうよう求める場合は、会社法429条の役員等の第三者に対する損害賠償責任の規定によります。
    裁判上で和解を行う場合、会社が和解の当事者として関与していないときは、裁判所は、会社に対して、和解内容を通知し、異議があれば2週間以内に異議を述べるように催告し、その期間内に会社が書面で異議を述べなければ、その和解を会社が承認したことになり、会社に確定判決と同一の効力が及ぶことになります(会社法850条)。
  6. 株主側が勝訴した場合、原告株主は、訴訟に関して支出した必要な費用又は弁護士に支払う報酬の範囲内で相当と認められる額の支払いを会社に請求することができます(会社法852条1項)。

 

 

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