株主の権利弁護団

株式買取価格決定の申立

1,はじめに

会社が、一定の定款変更・組織再編等を行う場合に、これに反対する株主や新株予約権者を保護する必要があります。このような場合、保護の手段として、会社に対し、自らが保有する株式や新株予約権を公正な価格で買い取るよう請求が出来ます。
基本的には、会社との協議で価格を定めますが、協議が成立しなければ、裁判所に対し、買取価格決定の申立をすることができます。

2,どのような者が、買取価格決定の申立ができるのか

  1. 発行する全部の株式の内容として譲渡制限の定めを設ける定款変更に反対する株主(会社法116条1項1号)
  2. ある種類の株式の内容として譲渡制限の定めを設ける定款変更、全部取得条項の定めを設ける定款変更に反対する株主(会社法116条1項2号)
  3. 株式の併合又は株式の分割、株式無償割当、単元株式数についての定款の変更、当該株式会社の株式を引き受ける者の募集、当該株式会社の新株予約権を引き受ける者の募集、新株予約権無償割当の各場合において、ある種類の株式を有する種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときの、反対株主(会社法116条1項3号)
  4. 全部取得条項付種類株式の取得に反対する株主(会社法172条1項)
  5. 単元未満株主からの単元未満株式の買取請求(会社法192条1項)
  6. 事業譲渡等、吸収合併等、新設合併等に反対する株主(会社法469条1項、785条1項、806条1項)
  7. 上記(1)(2)の定款変更をする場合の新株予約権者(会社法118条1項1号・2号)
  8. 会社が組織変更をする場合の当該会社の新株予約権者(会社法777条1項)
  9. 吸収合併、吸収分割、株式交換の場合における、消滅株式会社の新株予約権者(会社法787条1項)
  10. 新設合併、新設分割、株式移転の場合における、消滅株式会社の新株予約権者(会社法808条1項)

3,手続上の注意点

買取価格決定の申立をする際には、申立期限や買取請求期間に制限がありますので、注意が必要です。
全部取得条項付種類株式の買取価格決定の申立の場合を例にとると、まず、株主総会に先立って取得に反対する旨を会社に通知し、かつ、株主総会において反対した株主、または、株主総会で議決権を行使できない株主が、取得日の20日前の日から取得日の前日までの間に取得価格の決定の申立を裁判所に行う必要があります。

4,具体例

サンスターやレックスホールディングスのMBO(経営陣による自社株の公開買付)においては、全部取得条項付種類株式によって、少数株主の締め出しが行われましたが、これに反対する株主が、買取価格決定の申立を裁判所に行いました。
裁判所は、基本的には、価格決定に際し、客観的価値にある種のプレミアム(今後の株価の上昇に対する期待権や支配プレミアム等)を加えた価格を公正な価格として判断しています。
その上で、サンスターの場合は、公開買付価格650円に対して、840円を(大阪高裁平成21年9月1日)、レックスホールディングスの場合は、公開買付価格23万円に対して、33万6966円を(東京高裁平成20年9月12日)、公正な価格として決定しました。

以上

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