株主の権利弁護団

株主提案権

会社に対し、少数株主の立場から、株主総会で議案を提案する権利(株主提案権)を会社法第303条は定めています。

当弁護団と協力関係にあるNPO法人の株主オンブズマンは、取締役の報酬額決定の密室主義を打破すべく、個人別報酬額の開示を求めて、株主総会でその旨の定款変更をすべしとの株主提案権を行使し、その提案はつぎのとおりの賛成を得てきました。

2002年27.2%(同時提案の女性取締役の選任は17.55%の賛成で翌年実現)

2003年30.2%

2004年31.2%

2005年38.8%

2006年41.9%(総会発表では46.7%であったが後日「集計ミス」を理由に変更)

2007年44.3%

2008年39.7%

(注)賛成率は議決権行使総株数に対する賛成株数の割合

また、大林組の平成19年6月の総会に向けて、株主オンブズマンの会員株主らによって、定款に談合防止条文を新設する株主提案がされました。会社はこの提案を受けて、株主総会で自らその内容の定款変更を行うとの提案を行い(その時点で株主提案は取り下げています。)議決しています。

株主提案権は、株主総会で会社の方針に対し少数株主が提案し、是正・改善を求める有力な手段の1つです。
しかし、株主提案権についてはつぎのような問題点があります。

1つは、一般株主の議決権行使は通常、議決権行使ハガキによって行われますが、株主の多くは白票を投じていると考えられます。ところが、各議案について賛否の表示がない白票は、会社提案の場合は「賛成」、株主提案の場合は「反対」の意思表示があったものとして取り扱われています。株主提案について白票を反対とみなす不公平が改められない限り、株主提案が定款変更の可決に必要な3分の2の賛成を得ることはほとんど不可能であり、株主提案を実効あるものにするためにはその是正が必要です。

2つは、株券の電子化にともなう法令改正で、株主提案手続きが困難になったことです。
2009年1月5日から、株券電子化にともなう法令改正で、株主提案を行う株主は合意書(委任状)に加え、株主であるという証明書類(受付票)を会社に提出する制度になりました。新しい制度では株主は証券会社に申し出て受付票を入手します。証券会社は、株の電子データを持つ「証券保管振替機構(ほふり)」を通じ、受け付けた株主の名前などを株の発行会社に通知し、株主は議題の提案を、会社が通知を受けて4週間以内に行う必要があります。

従前は、株主から株主提案についての賛同の委任状を受領することによってできた株主提案は、株券の電子化によって困難になっている点についてもその改善が急務です。

会社の提案とともに、少数株主からの株主提案権に基づく提案がなされ、会社の方針をめぐって活発な議論がなされることは、株主総会の活性化とともに、経営陣が株主の提案を共に考え、よりよい会社提案をつくりあげるためにも大切なことです。

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