株主の権利弁護団

公認会計士から診た上場会社 (三馬忠夫)

1、間接金融から直接金融

近年、金融市場に対する会社(企業)のあり方が大きく変化している。事業資金の調達に関しても、従来は、金融機関からの借入れなど間接金融が主たる方式であったが、会社(企業)では株式を公開うることによって、機動的な資金調達、いわゆる直接金融によって、事業資金を調達する方式になってきた。

2、公開のメリット、デメリット

会社企業では、株式の上場公開することにより、信用度が増し、事業展開の円滑化がはかられ、又優秀な人材が確保できるという副次的なメリットを受けることができる。一方、株式を上場公開する場合には、上場審査基準をクリアーしなければならないことと、上場中は市場の厳しい評価とあわせて投資家への説明責任が求められるなど、上場公開にかかわる煩わしさとコストが生じることとなる。

3、公開会社の責務

上場公開した会社企業においては、株式価値が日常的に市場投資家の判断を受けることから、企業経営者の力量・資質が問われることになる。このように上場公開会社においては、株主と経営者との間にある種緊張関係が生じること、及び株主代表訴訟、金融商品取引法などによる法的責任を負う事となる場合が発生する。
株式を上場公開する取引所は、東京、大阪、名古屋、札幌、福岡などに設けられている。

4、上場公開前後での会計監査

会社企業がその株式を公開する場合には、公開に先立って2年分の財務諸表について公認会計士又は監査法人による監査(会計士監査)を受けなければならない。その監査結果に基づいた「監査報告書」は上場審査基準の要件になっている。

上場公開後においては、毎期の財務諸表についても、公認会計士又は監査法人による監査を受けなければならないこと、その結果「監査報告書」に表明される監査意見は、無限定適正なものであることが必要である。そうでない場合には上場廃止基準に抵触することとなって公開市場から撤退を余儀なくさせられることになる。

上場公開会社の監査を受託する公認会計士又は監査法人は、株主総会によって選任されることによって、当該企業と個別に監査契約を締結して、監査業務を行うことになる。上場公開会社と監査を行う公認会計士又は監査法人は、独立した第三者であり、上場公開会社との間に特別の利害関係がない事が規定されている。

5、公認会計士又は監査法人の会計士監査

上場公開会社の監査を行う公認会計士又は監査法人は、会社の作成する財務諸表、すなわち四半期報告書、中間財務諸表及び計算書類など、の適正性を検証し検討する為に、当該企業の事業年度の期中・期末に決められた監査手続を実施して、監査意見形成できる監査証拠を集積しなければならない。

上場公開会社における財務諸表に関して、適正な監査意見が述べられた「監査報告書」を受けて上場公開会社の決算が確定することとなるから、公認会計士又は監査法人の行う監査は、上場公開会社の決算にとって重要な位置を占めている。上場公開会社の財務諸表及び監査報告書などは、有価証券報告書まとめられ、上場公開している証券取引所及び管轄する諸官庁に提出されることになっている。

6、会計士監査に対する期待ギャップ

近年、公認会計士又は監査法人が行う監査結果によって公にされた適正意見がふされた「監査報告書」があっても、粉飾決算などの企業不祥事が多く発生していることから、公認会計士又は監査法人が行う監査に対する信頼性が必ずしも高くない、むしろ低下しているところである。

しかし、証券取引市場を取り巻く関係者においは、公認会計士又は監査法人が行う監査に対する期待は、今日の国際化、複雑化した経済社会において活動する上場公開会社の状況から、益々高くなっている傾向にある。

7、証券市場の活性化と公認会計士又は監査法人

 証券取引市場の活性化は、経済民主主義の根幹であることを踏まえて、証券取引市場の一つである公開株式市場を活発にするためには、投資家などが情報格差に置かれないようにすることでもあり、関係者における姿勢において、上場公開会社は勿論のこと、上場公開を担当する幹事証券会社、証券取引所そして、独立した第三者として上場公開会社の監査を行う公認会計士又は監査法人などの責務は今後益々重要となる。

以上
平成22年5月13日記(文責:三馬忠夫)

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